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公開日:2026.04.10
2026年3月、アンカー・ジャパンは大阪府歯科医師会と「災害時における物資供給に関する協定」を締結しました。地方自治体との防災協定は全国11自治体に広がっていますが、医療に関する団体との協定はこれが初めてです。
歯科医療に電気は不可欠。しかし「災害への備え」と聞いたとき、電源のことを真っ先に思い浮かべる人はまだ多くありません。同じように、避難生活で口腔ケアの優先度が高いと認識している人も、決して多くはないでしょう。
「なくなって初めて気づく」 電気と歯科医療には、そんな共通点がありました。
大阪府歯科医師会の深田拓司会長と、アンカー・ジャパン代表取締役 CEOの猿渡歩が、協定締結の背景から今後の展望までを語り合いました。
災害の最前線で見えたもの
まず、これまでの防災に関する取り組みについてお聞かせください。

深田 拓司
大阪府歯科医師会 会長
日本歯科医師会には「JDAT (Japan Dental Alliance Team) 」という災害歯科支援組織があります。熊本地震の教訓から立ち上がったもので、実際に本格稼働したのは能登半島地震が初めてでした。私たちも大阪からJDATを通して能登に入ったのですが、やはり現場は混乱していました。何が必要なのか、物資の供給はどうなっているのか、把握が追いつかない状況でした。
能登半島地震においての第一報は、「水がない」という声でした。1月1日ですから、どこも閉まっている。機敏に対応しなければならないという信念のもと、歯科医師会館に災害用に備蓄していた水を送りました。
机上の計画では進まない。想定外をなくすためには、平時からパイプをつないでおかないといけない。それが今回の協定につながっています。

猿渡 歩
アンカー・ジャパン 代表取締役CEO
私たちも同じ経験をしています。ポータブル電源をAnkerとして日本で最初に発売したのが、ちょうど熊本地震のタイミングでした。発売直前だったので、最初の100台はすべて熊本に寄付したんです。
能登半島地震は1月1日でしたので、私が社員の安否を確認した後、1時間ほどでSNSに「自治体で困っている方にはポータブル電源を無償でお送りします」と投稿しました。それがかなり拡散されて、能登を含む複数の地域に数千万円規模でお届けしました。物流は自社ではどうにもならず、物流会社さんと協力して運んでいただきました。
やはり避難所の体育館では電源が足りず、充電ができない。今の時代、スマートフォンが使えないとニュースも確認できないですし、エンターテインメントもない。そういう意味で、非常に活用いただけたと感じています。現在は福岡市や川崎市など全国11ほどの自治体と災害時に優先供給をする防災協定を結んでいます。
なぜ歯科医療と電気なのか
歯科医療と電気、一見すると異なる分野ですが、協定に至った背景を教えてください。

深田 拓司
私たちの歯科機材は、高度化が進むにつれて電源が絶対に必要になっています。日々の診療では電気があることが当たり前すぎて、逆に意識しにくい。でも災害時に電気がなければ、歯科診療そのものが止まってしまう。
最初に頭に浮かんだのは発電機でした。ところが、ガソリン式の発電機は燃料の管理が必要で、資格がいるケースもある。燃料がなくなったらそこで終わりです。

猿渡 歩
発電機はサイズも大きいですし、燃料の管理や定期的な入れ替えも必要です。その点、ポータブル電源は電気ですから、資格も要りませんし、管理する人も特に必要ない。煙が出るわけでもないので、室内にそのまま置いておけます。
それに、実は最近のモデルは充電したまま置いておいても、ほとんど放電しないんです。1年でわずか数パーセント程度。いざ使おうとしたらバッテリー残量が半分に減っていた、ということがありません。1回充電しておけば、クローゼットに置きっぱなしで大丈夫です。

深田 拓司
いやあ、急にAnkerさんにお電話して「電源が足りません」と言っても、そこから動くには時間がかかるでしょう。だから平時のうちにこうしてパイプをつないでおくことが大事なんです。
災害時にスムーズに対応しますという協定を結ぶだけでなく、事前に機器を配備しておく。追加で足りない分は後から送っていただく。そのハイブリッドの体制ができたことが大きいと思います。

「なくなって初めて気づく」── 電気も歯も同じ
お二人のお話を聞いていると、電気と歯には「予防」という共通のキーワードがあるように感じます。

猿渡 歩
まさにそうです。歯の健康もそうですが、充電もやっぱり「とりあえず衣食住はあるけど、電気は後回しでいいか」となりがちです。私たちは「衣食住+電」と言っているのですが、電気は衣食住に次いで、いや場合によってはそれと同じくらい重要だと考えています。
モバイルバッテリーは今、日本で5〜6割の方が持っています。スマホの充電が切れるのは誰しも一度は経験しているから、「あったほうがいい」と事前に買える。でも家全体の電気となると、自分は関係ないと思ってしまう。まるで保険と同じです。

深田 拓司
歯もまったく同じなんですよ。私たちは「8020運動」── 80歳で20本の歯を残しましょう──という国民運動を永年進めてきて、大きな成果を上げています。でもその先にある「口腔の健康が全身の健康につながる」という話になると、まだまだ気づいていただけていない。
診療所で患者さんに「歯の健康は大切ですよ」とお伝えしても、「いいから早く治してよ」と思われてしまう(笑)。だからこそ分かりやすく伝える工夫が必要で、以前はミルクボーイさんに歯科啓発の漫才を作っていただいたり、万博でもセンシング技術を活用した展示をさせていただきました。

猿渡 歩
私たちも似たアプローチをしています。モバイルバッテリーは実は適切に処分しないと危険なのですが、それを啓発するために「リイオンくん」というライオンのキャラクターを作りました。専門家が難しい話をするよりも、親しみやすい形で届けたほうが受け入れてもらえますよね。


深田 拓司
おっしゃる通りです。専門家が熱く語るよりも、「気づき」につなげるほうが皆さん受け入れやすい。病気にならないとその大切さは分からない。でも病気になってからでは遅い。日々のケアをしっかりしましょうという部分は、電気の備えとまったく同じですね。

猿渡 歩
停電した後にポータブル電源の購入を検討いただく方が多くいらっしゃいますが、停電してから買っても、届くのは2日後。届いた頃にはもう復旧していたりする。結局「次のために」ということで買うんですけど、それなら最初から持っていればいい。一度経験した人は買うけれど、経験していない人は「自分には関係ない」と思ってしまう。

深田 拓司
経験が一番の動機になるんでしょうけれど、すべてを経験するわけにはいかない。だからこそ啓発が大切なんですよね。

10年前の常識はもう通用しない
ポータブル電源の技術も大きく進化しているそうですね。

深田 拓司
正直に申し上げると、私たちのポータブル電源に対するイメージは10年前で止まっていたかもしれません。「すぐなくなる」「パワーが足りない」という印象です。中にファンが回っていて、ブーンと放熱しているイメージで。


猿渡 歩
10年前とは大きく状況が変わっていると思います。
以前は1000W出すのも難しく、スマートフォンや小さな家電を動かすのがやっとでした。熱を発する機器はW数が高いので対応できなかった。しかもこの容量帯の製品は、ほんの2〜3年前まで今の倍のサイズだったんです。キャリーケースのようにコロコロがついていた。今はなんとか手で持てるくらいにまで小型化しています。

深田 拓司
小さくなると発熱の問題はどうなるんですか?

猿渡 歩
二つの面があります。一つはバッテリーセル自体を安全に作る技術。もう一つはBMS(バッテリーマネジメントシステム)というソフトウェアで、異常があれば遮断したり、熱を感知してICで調整する仕組みです。ハードとソフトの両軸で制御が進化しているので、高密度でも安全なものが作れるようになっています。
バッテリーセル自体も、以前の三元系のリチウムイオン電池から今はリン酸鉄リチウムイオン電池が主流となってきており、製品によっては10年の長期保証ができるようになりました。昔は2〜3年で買い替えが必要でしたが、今は5年、10年使い続けても大丈夫です。


深田 拓司
それは概念がまったく変わりますね。うちの会員の先生方にも「診療所に置いて発火したら大変だ」というイメージを持っている方がいますが、バッテリーの種類自体が違うんですね。

猿渡 歩
はい。安全性のデータも含めてパンフレットをお作りできますので、先生方に安心してご検討いただけるようにしたいと考えています。
これからの展望
最後に、今後の展望をお聞かせください。

深田 拓司
まずは避難所での口腔ケア活動にポータブル電源を活用していくこと。そしてもう一つは、会員の先生方の診療所への配備です。データの裏付けがあれば、各診療所の先生方も「非常時の電源が必要なんだ」と気づいていただけると思います。
実は会員からも「歯科用チェアはどのくらいの時間動くのか」「ソーラーパネルでの充電時間は」と聞かれるんです。ぜひAnkerさんと一緒に、実際の歯科医療機器での稼働データを取りたい。計算上のデータだけでなく、実験した実績の積み上げがあれば、それが根拠になりますから。

猿渡 歩
歯科でよく使われる機器に合わせたパンフレットを作成して、データとセットでお渡しできるようにします。こうした取り組みを全国に広げていくことで、「衣食住+電」の考え方を、医療・衛生の分野にもしっかりとつなげていきたいと思います。

深田 拓司
それが安心・安全の提供につながる。安全保障の原点じゃないかなと思っております。しっかりと皆さんにアナウンスしていきたいですね。

猿渡 歩
電気の備えも口腔ケアの備えも、啓発できればいいなと思っています。どちらも予防が先。そこを一緒に発信していければと思います。
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